パートナーを「嫁」と呼ぶだけで損をする!?|仕事の引き出しvol.1
好感度の高い芸人は「嫁」と呼ばない
自身のパートナーを人前でどう呼ぶか――、特に男性経営者は、その呼称ひとつで損をしてしまうことがあるようだ。関西圏では「嫁」と呼ぶ人が少なくなく、愛着を持って「うちの嫁が…」と話しているのをよく耳にする。しかし、この「嫁」呼びに対して、居心地の悪さを感じる女性が増えている。
昨年の春先にも俳優の松山ケンイチが、テレビ番組で妻で女優の小雪を「嫁」と呼んだことについてネット上で議論となった。松山は自身の節約生活について語るなかで「髪は嫁に切ってもらうこともある」と言っただけ。個人的には、妻に対する感謝の気持ちも感じられ、特に違和感は覚えなかったが、SNSでは「自分は嫁呼びされたらイヤ」という声が相次いだ。
改めて振り返ってみると、「嫁」呼びがメジャーな芸人の世界においても、高感度の高い売れっ子ほど「嫁」と呼ぶ人は少ない。
たとえば南海キャンディーズの山里は、妻で女優の蒼井優が出演するCMにちなんで「WAON」さんと呼ぶし、千鳥のノブも「むっちゃん」と相性で呼ぶことが多い。麒麟の川島や、絶大な女性人気を誇るかまいたちの濱家も「奥さん」と呼んでいる。
たかが呼び方だが、現代は言葉に対してとかく敏感だ。20年前には普通に使われていた言葉が、いつの間にか差別や誤解を招く表現として見直されることも増えた。それは言葉狩りでは…、と感じるケースも少なくないが、「嫁」という表現ひとつで「パートナーをぞんざいに扱っている」という印象を与える可能性があることは知っておいてもいいかもしれない。
無難なのは「妻」呼び
人を加点方式で評価する男性に対し、女性は減点方式で評価するといわれる。女性の支持が不可欠な商品サービスを提供している企業においては、たとえジェンダー平等な社風だとしても、社長がどこかで「嫁」呼びをするだけで印象がマイナスに傾きかねない。SNSなど個人の発信が、メディアの発信力を越えることもある時代。Twitterなどでその発言を拡散されると、企業そのものの信頼度が下がることもあり得る。では、何と呼べばいいのか――。
正式かつ無難なのは「妻」だろう。
辞書によると、夫の配偶者が「妻」であり、「嫁」は息子の配偶者、「奥さん」は他人の妻となっている。ただ、改まった場でなければ「奥さん」と呼ぶのも、愛着とリスペクトを感じられて印象として悪くはなさそうだ。ちなみにタレントのヒロミがいう「ママ」は賛否両論あるので避けたほうが無難。「母」という立場以前に「女性」だと主張する人もいるからだ。
女性は正直、言葉選びに厳しい人が多いように感じる。それは、脳のつくりとして女性の方が感受性が強い傾向にあるからだと考えられるが、とはいえ男性サイドも、パートナーを「旦那」と呼ぶか、「夫」と呼ぶかで、その女性のイメージが少なからず変わるのではないだろうか。
「たかが呼び方に目くじらを立てなくても」という気持ちもわかる。ただ、ジェンダーの平等が浸透するにつれ、「たかが呼び方」が思わぬ火種となる可能性があることは覚えておきたい。
(執筆:鶴野浩己)